コンテンツにスキップ

黎明期におけるAVTuberの発祥と展開

提供: AVTuber Wiki
2026年4月4日 (土) 15:30時点におけるR Train (トーク | 投稿記録)による版 (黎明期のAVTuberについて詳述)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)

AVTuber関係者一覧 > 黎明期におけるAVTuberの発祥と展開

この記事では、2018年から2020年にかけての黎明期におけるAVTuberの発祥と展開を詳述する。

前提と注意点

2018年から2020年にかけてのAVTuberの歴史を書き起こすことは、今日では極めて困難な作業となっている。これは、

  • いわゆる「垢BAN」に伴う、一次資料である配信記録の散逸
  • リスナー側における「アダルトな配信活動を記録に残す」モチベーションの希薄さ
  • 第三者による記録や報道の少なさ

など複数の要因が折り重なってのものであるが、客観的な証拠に基づく記述がかなり難しい状況となっている[1]ポータルプロ関連の記録は例外的に整備されているものの、万楽えね柚木凛のデビュー当初の配信内容など不明なものが多い。

本記事における「2018年の万楽えね、2019年のポータルプロ(つむぎ)、2020年のえもえちプロダクション(柚木凛)によって段階的にAVTuberが発祥していった」という「段階的AVTuber発祥論」も客観的な根拠を提示するまでには至っておらず、本記事では便宜上この見方に基づくが、異なる見方(「えもえちプロダクション起点説」など)も有り得る点に留意する必要がある。

また、本記事では主に日本で起こった状況を記述している点に留意されたい。

前史:VTuber文化そのものの成立

AVTuberの発祥過程を理解するには、まずVTuber全体の起点を見る必要がある。

現在広くイメージされる一般的な「VTuber」という存在は、2016年末に活動を始めたキズナアイによって広く定着し、その後2017年後半から2018年前半にかけて爆発的に広がった。また当初はキズナアイを指し示す言葉だった「バーチャルYouTuber」がこの広がりとともに「アバターを使って配信するYouTuber」という意味に変化するとともに、「VTuber」という略語も2017年12月頃から広がり始めている。

この黎明期のVTuberを取り巻く文化には、当初から性的ニュアンスを含む冗談・二次創作・際どい企画が一定数存在した。2018年1月ごろからは「アダルト」と「VTuber」をかけ合わせて「AVTuber」と呼称する言葉遊びがごく一部で始まっている[2]。2018年2月14日には、YouTubeに投稿されたハロクリ所属企業系Vtuber響木アオの自己紹介動画【自己紹介】響木アオです♡におけるAV的な演出[3]が話題になり、同動画のコメント欄や動画に言及したツイートなどで「AVTuber」と呼ばれていたことが記録されている(響木アオの記事を参照)。もっとも、この段階の「AVTuber」は、現在のように成人向け活動を中核にする配信者群を指す定着語ではなく半ばネタ的・形容的な用法であり、この後の使用も散発的なものに留まり、広く定着したものではなかった。

萌芽期:「プレAVTuber」の出現(2018年)

後年の整理では、万楽えねが、日本のAVTuber史の最初期に位置づけられることがある。本記事においては、万楽えねをAVTuber史における先駆的重要人物と規定し記述する。

万楽えねについては、「デビュー当時の活動内容は今日的な意味でのAVTuberには該当していなかった」とする見方が一般的である。当時の配信アーカイブの大半が散逸しているため、実際にどのような配信を行っていたのかを確認することは難しいが、「喘ぎながら壺おじゲーをやったり」「性器を模したキャラクターが出てくるゲームをやって」その結果YouTubeチャンネルをBANされて、逆にそれで有名になっていたとのKarin(後のバーチャル風俗店X-Oasis経営者)による証言が残っている[5]。また、それから約1か月後の2018年3月29日にバーチャルリアリティアダルト情報サイト「VR18」に掲載された記事BAN上等のバーチャル生エロ配信でFC2送りに!バーチャルYoutuber勃興期に股間を盛り上げるアダルトVTuber特集において、万楽えね、Karin、アンナ、ヨシヒ子の4人が「アダルトVTuber」として紹介されている[4]

これらのことから、万楽えねやKarinの行っていた配信活動は「成人向けの話題と親和性が高い」「アダルトな話題を躊躇なく扱う」ものだと言え、今日的な意味でのAVTuberに明確にカテゴライズされるものとは言えないまでも、AVTuberの萌芽もしくは原型を示していたことはほぼ確実と見てよい。この意味で、万楽えねやKarinがAVTuberの源流に位置する、実際の性行為を伴わないが性的表現・話題を積極的に扱う「プレAVTuber」とする見方は決して的外れではない。

ただし、この時期はまだ彼女達をカテゴライズする業界内の呼称も固まっておらず、「アダルトVTuber」「セクシー系VTuber」「エロVTuber」など複数の言い方が混在していたとされる[5]。つまり2018年は、「AVTuberというカテゴリが成立する前に、その原型だけが先に現れていた時代」と見るのが妥当である。

もう一つの重要な源流:ポータルプロ構想(2018年)

AVTuber史を語る上で、ポータルプロの存在は概念的・思想的に非常に重要である。

2018年5月ごろに構想の原型が考案され、同年6月16日にポータルプロと「つむぎ」の設定資料として公開されたこの構想は、非常に先駆的かつ本質的なものだった。前述のVTuber文化の盛り上がりを見た同人AV制作の第一人者・ピンキーweb氏による、「(VTuberもの同人コスプレAVを「ナマモノ」リスクを回避して作るために)最初から成人向け展開も可能な架空VTuberとその所属事務所を用意する」という発想は、そこからポータルプロ設立とオリジナルアバター「つむぎ」の制作へつながったとされている。これは、既存キャラクターや既存VTuberの二次創作的な扱いではなく、成人向け活動を前提に最初からAVTuberのIPと運用設計を組むという点で、非常に先駆的だった。

要するにポータルプロ構想は、AVTuberを一過性の「際どいVTuber」ではなく、制作・出演・配信・権利処理を前提とした一つのトータルな業態として他に先駆けて考えていた構想であり、AVTuber史上における大きなエポックメイキングであった。

概念確立期:実活動としてのAVTuberが立ち上がる(2019年)

ポータルプロ初代メンバーのつむぎは、2019年4月19日にFC2で初配信を行い、その際に実際に性行為を行いながら配信した。またその様子を実写でも撮影しており、後日双方の動画を組み合わせて「本当に性行為を行いながら配信している様子を実写で証明する動画」を販売した[6][7]。これはVTuberが実際に性行為を行いながら配信したことが明確な証拠として残っている世界初の事例であり、「性行為実演表現を中核活動として行うバーチャル配信者」がここで初めて具体的に姿を現した。

これは極めて重要なマイルストーンであり、それまでの「プレAVTuber」とは明らかに異なるステージに突入したことを意味する。この時点まではどんなに際どい配信内容であったとしても、実際には性行為は行っていないという建前やお約束が存在していたが[6]、つむぎの配信内容はその前提を易々と乗り越えるものだった(何しろ実写映像によって「本当にセックスしている」ことが事実として示されている)。この、ある種の同人AV的手法によりVTuberの「お約束」を突破したつむぎとポータルプロによって、現在的な意味でのAVTuberの活動が初めて表舞台に現れたのである。

ただし、つむぎは自身のことを「架空のバーチャルタレント」と、ポータルプロも「架空のVタレント事務所」と名乗っており、この段階では「AVTuber」という言葉では定義されていなかった。

産業化成立期:えもえちプロダクションによるAVTuberの産業化(2020年)

AVTuberが本格的に一つの分野として確立した最大の契機は、えもえちプロダクションの登場である。公式サイト[8]では自らを「日本初のAVTuber(柚木凛)が誕生した事務所」と説明し、公式Xでは2020年2月に「VTuber業界初AVプロダクション『えもえち』を設立」と告知している[9]。こうして、それまではネットミームに過ぎなかった「AVTuber」という単語を大々的にブランディングし自らを定義する言葉としたえもえちプロダクションは、ネットニュースやアダルトメディアを通じた露出を通じてAVTuberのマネタイズを精力的に推進した。

ここで起きたことは、個人配信者や同人サークルが活動を展開していたという段階から、

  • 所属管理
  • キャラクター展開
  • 公式チャンネル運営
  • ブランドとしての広報

を推し進める起業化・産業化の発生段階への移行であった。つまり日本のAVTuberは2020年前後に、個人の実験や同人の延長から、小規模ながら事務所産業に近い形へ進み始めたのである。

この「事務所産業化」は、一般VTuber業界における2018年のにじさんじ・ホロライブの伸長に少し遅れて、AVTuber側でも同様の動きが起きたものと見るとわかりやすい。一般VTuberの拡大が市場・視聴習慣・技術基盤・経営ノウハウを整え、それを活用してAVTuber側が小規模ではあるが効率よくマネタイズを構築していった、という順番である。

海外での状況

日本で起こった動きとの因果関係や関連性は不明ながらも、2019年7月には海外でプロジェクトメロディ(Projekt Melody)が活動を開始し、2020年2月からは実際に配信活動を開始している。国際的には彼女が「virtual camgirl」「virtual adult streamer」の世界初の事例かつ代表格として扱われている。したがって2019年から2020年にかけては、日本でも海外でも、AVTuber的な活動が“概念”でなく実体として同時多発的に立ち上がった時期と見てよい。

ただしプロジェクトメロディが「Camgirl(アダルトライブチャット文化)の3Dアバター化」という文脈で語られているケースが多い点は、日本における状況と大きく異なっている点である。

総括:段階的AVTuber発祥論

2018年2月から2020年2月にかけてのAVTuber黎明期の流れを俯瞰すると、それぞれの個人や企業が「VTuberが行う成人向け表現」のあるべき姿を求めてそれぞれ突っ走っていた混沌の時代であったことがわかる。そこで起こっていたことは、誰か1人の特定の人物や団体によってAVTuberという存在が一気に発祥したという単純明快な状況ではなく、

  • 萌芽期(2018年):VTuber文化の中から万楽えねKarinのような「プレAVTuber」が現れ、AVTuberの原型が示される
  • 概念確立期(2018~2019年):同人AV文化の文脈から発したポータルプロ構想がVTuber文化やプレAVTuberと交わった交差点上でAVTuberの概念が成立し、AVTuberの実活動が始まる
  • 産業化成立期(2020年):一般VTuberの事務所産業化のノウハウを応用したえもえちプロダクションによる、AVTuberにおける本格的なマネタイズの展開が始まる

という、AVTuberという存在が段階的に発祥していった複雑な流れだった。その意味で、誰か特定の1人を「AVTuberの起源」と語ることは間違いとも言えるし、一面の真実であるとも言える。

注釈

  1. 例えばAVTuber Wikiにおいてさえ、「世界初のAVTuber」柚木凛のAVTuber自称の時期を長らく「2020年2月」ではなく「2019年7月」と誤認したままであった。これは当時のWikipediaの事実誤認に引きずられたためと思われる。
  2. [1][2]など。
  3. 「新人デビューしたセクシー女優へのインタビューシーン」そのままのフォーマットで作られていた。なお言うまでもないが、響木アオは一般VTuberである。
  4. ただし紹介記事の内容から判断して、性行為実演は伴っていなかったと思われる。
  5. この時点での「AVTuber」の呼称は先述のように半ばネタ的なものに留まっており、具体的なカテゴライズとしては用いられていなかった。むしろ、響木アオを非公式に指し示す言葉としての意味合いすらあった[3][4]
  6. ただしあくまでも建前であるため、プレAVTuber達が実際に性行為を行いながら配信していた可能性自体は否定されない。